MYANMAR
はるか昔、遡ること約1000年。エーヤワディー川周辺には土着の民族による幾つもの小国家が存在していた。だが、中国南部より南下したビルマ人によりその国々が統一され、最初の統一国家「バガン王朝」がこの地に建国される。バガン王朝は先住民族の文化的影響を受け、仏教や文字を取り入れることにより文明民族として大きな繁栄をもたらした。しかし、大乗仏教を廃止し、上座部仏教を国教とした事により、王たちは過度ともいえる寺院建築を始めやがてそれは国力を疲労させるという皮肉な結果となった。
時代は流れ、ミャンマーは幾度も戦火を交え、植民支配、独立をたどる過程で軍部は軍事政権を樹立する事となる。だが、腐敗した軍政にミャンマーの人々は民主化を叫び、軍部による圧政、武力弾圧を退けついに2015年11月13日、民主化を叫んできた国民民主連盟 (NLD)が歴史的勝利を収めた。
私がミャンマーに訪れたのは、政治的な熱をピークに迎えようとするその時、NLDが勝利を手にする一月前であった。そこで私が目にした激動の狭間に生きるミャンマーの人々の素顔は、意外にもいたって平穏なものだった。しかし、彼らは目を輝かせて言う。
「軍政が終わればミャンマーはもっと豊かになる」
苦しい貧困を経験してきた国家が、静かな微熱を帯び新たに大きく動こうとしているのだ。