INDIA
パキスタンとの国境を跨ぐ広大なタール砂漠の中心に一際目立つ丘。訪れる者を圧倒するその正体、それはジャイサルメール城である。巨大な城壁に囲まれたこの街は、かつて東西交易の中継基地として繁栄した。だがインドの都市部から遠く離れたこの街は近代化することなく、今なお古いアラブ世界が広がったままである。そんな砂漠のアラビアンナイトを目指し、ニューデリーから寝台列車で18時間の旅路に出る。
辿り着いた褐色の砂漠の街は、光の加減によってまるで黄金のように輝く。そんな黄金の街に住まう人々は至ってゆったりとしたライフスタイルを送っている。だが、ヒンドゥやイスラムなど多数の宗教が交じり合ったこの街は、様々な思想の人々が行き交うと共にカーストによる身分や職業も多種多様だ。
ラクダに乗って訪れた砂漠の村には、土を盛って固めただけの素朴な住居が並ぶ。何百年と基本的な生活は変わっていないのだろう。毎日井戸から水を汲み、牛の乳を搾り羊を放牧しながら日々を送る彼らの生き方は実に力強い。めまぐるしいスピードの資本主義社会に流され生きる我々には得られることの出来ない生き様だ。変わらない価値観の上で一生懸命に“生きる”という彼らの生き方を、少しばかりうらやましく思った。











